地方公務員への転職を考えたとき、給料はどうなるのか気になりますよね。
特に大企業で30代まで働いてそれなりに年収をもらっている場合、転職で毎月の給料や年収がどのくらい下がるのか不安になるかと思います。
結果として、夫は希望通り地方公務員に転職し、予想通り給料は大きく下がりましたが、生活水準を下げずに何とか暮らせています。
この記事では我が家での経験をもとに、30代で地方公務員に転職した場合の給料事情について紹介します。
・地方公務員に転職したいけど給料が気になる人。
・転職で給料が大きく下がった家庭の生活の変化を知りたい人。
・地方公務員の給料について詳しく知りたい人。
地方公務員の採用試験の要項には、いくつかモデルケースの給料は載っているものの、年収やその後の昇給などの情報はわかりません。
でも実は、地方公務員の給料事情は自治体が公表する給与条例の情報からそれなりに精度高く計算ができます。
詳しく紹介していきます。
30代で地方公務員に転職すると給料はどうなる?
大企業から地方公務員への転職は給料は下がる確率が高い【1年目は年収500万円以下が目安】
30代、経験年数10年で地方公務員に転職した場合、転職1年目は年収500万円以下が目安です。地方公務員の中途採用者の給料は職歴経験年数でほぼ決まり、前職の給料は考慮されません。
大企業であれば30代なら年収は500万円より高いはずなので、給料は下がる確率が高いと考えられます。
給与条例は自治体ごとに定められていて
年収を構成する
「毎月の給与(給料+諸手当)」
「年2回のボーナス(期末手当+勤勉手当)」
の金額は全て給与条例で決まっています。
自治体の給与条例はウェブ上に公開されており、その情報を読み解けば年収が計算できるのです。(「○○市職員 給与 条例」で検索するとヒットします)
ということで条例に比較的多くの情報が載っていた京都市役所を例に計算してみました。金額は額面です。
32歳、経験年数10年で京都市役所に社会人枠(行政職)で採用された場合の想定年収
計算に使った給与条例は以下のとおり。
<リンク>
京都市職員給与条例
京都市職員給与条例施行細則
・等級と号給
給料を決める職能レベル
「職務の等級」仕事の複雑さや困難さ、責任度合いによって区別
「号給」同じ級の中で経験年数によりさらに細分化
・給料表
等級と号給に対する給料を一覧にしたもの。職種(行政、技術など)ごとにある。
・地域手当
勤務地による生活の支出の差を埋めるための手当。基本給+扶養手当に対し0〜20%の割合で支給。
上記想定年収は丸々1年地方公務員として働いた場合。実際には採用は4月1日なので転職1年目は下記理由で若干金額は変わります。
・1~3月は前職の給与となる。
・1年目は6月のボーナスは満額支給されない。
→4~5月しか働いていないので支給率は30%程度
また、残業代は含めていません。
これはあくまで京都市役所の例で、給料表、地域手当の支給割合、民間企業での経験年数の換算率など、自治体により変わります。
自治体によっては民間企業での経験年数の換算率が載っていないこともあります。
その場合は、換算率100%として計算し、算出した年収よりは少ないと考えてください。
なお、京都市役所の平均給与は全国の自治体でも上位(全県市町村で約20位)なので、上記で計算した
「30代での地方公務員へ転職1年目の年収500万円以下」というのは他の自治体でも当てはまると考えていいでしょう。
もちろん、今回の例よりも職歴年数が多かったり、残業することで500万円を超える場合もあるので、目安程度に考えていただければと思います。
その後の昇給はどうなのか、続いて説明していきます。
地方公務員の年収は通常の昇給で約10万円、昇格で約30万円アップする
2年目以降の年収も給与条例の情報から計算ができて、年収は1年で約10万円のペースで上がっていきます。
先ほどの計算でも使った「1年の昇給は4号給」(京都市職員給与条例施行細則 第13条)
をベースに2年目以降の年収を計算すると以下のとおり。
32歳、職歴10年で京都市役所に社会人枠(行政職)で採用された場合の想定年収
2年目以降も急激に年収が上がるわけではないので、これじゃ足りないっていう時は無理のない程度に残業して増やすしかありません。
(部署や時期によって残業するほど仕事がないこともありますが・・・)
もっと年収を上げたい!と思ったらどうすればいいか。
下記のとおり、昇給は同じ級で号給が上がるのに対し、昇格では級が上がり給料も大きく増えます。
(例)昇給、昇格時の給料比較
・昇給
2級59号給(279,600円)→2級63号給(285,700円)
+6,100円
・昇格
2級59号給(279,600円)→3級47号給(297,200円)
+17,600円
※昇格の場合、昇格前の等級と号給に対して昇格後の等級と号給を定めた対応表に従います
<参考>
京都市職員給与条例 別表第1の1(第3条関係) 行政職給料表
京都市職員給与条例施行細則 別表第6(第9条関係) 昇格時号給対応表
これも自治体によりますが、入庁して5年程度働くと係長試験を受けられるようになり、試験に合格すると係長クラスの級まで昇格できます。
京都市役所の場合、行政職の各級の基準職務は以下のとおりで、係長試験に合格すれば4級までは昇格できると考えられます。
1級:相当の知識,技術,経験等を要する職務
2級:やや高度の知識,技術,経験等を要する職務
3級:主任の職務
4級:係長又はこれと同じ職制上の段階に属するものとして任命権者が定める職の職務
5級:課長補佐又はこれと同じ職制上の段階に属するものとして任命権者が定める職の職務
6級:課長又はこれと同じ職制上の段階に属するものとして任命権者が定める職の職務
7級:部長又はこれと同じ職制上の段階に属するものとして任命権者が定める職の職務
8級:局長又はこれと同じ職制上の段階に属するものとして任命権者が定める職の職務
<参考>
京都市職員給与条例 別表第2(第3条関係) 級別基準職務表
なお、昇格は1年に1回までで、また既に合格している人の待機状況(ポストが空かない)次第ではすぐに昇格できない場合もあります。
仮に6年目に係長試験を受けて合格し
7年目に2級→3級へ昇格
8年目に3級→4級へ昇格
した場合の年収をシミュレートすると以下のようになります。
昇格した年は年収30万円以上と大きく増加します。
その後はしばらく同じ級で4号給の昇給が続きますが、級が上がると昇給による給料の上がり幅も大きくなるので、年収も早く上がっていきます。
なお、係長試験に合格しなくても同じ級での在級年数、入庁後の在勤年数などの条件を満たせば昇格することはあります。(役職はつきません)
でも、係長試験に受かった場合と比べると圧倒的に年数がかかります。
多少の責任を受け入れて係長になり年収を早く上げるか、担当のままでいることを優先するかはその人次第です。
地方公務員への転職で給料が下がっても生活水準は変わらない
ここまで転職後の給料事情について紹介しましたが、転職前よりも給料が下がる方にとっては生活面での不安があると思います。
でも実際のところ、我が家では夫が地方公務員への転職により年収が700万円→500万円に下がっても生活水準は変わりませんでした。
もちろん家計の見直しは必要で、節約や節税にも取り組み何とか生活水準を下げずに暮らしができている感じです。月々にできる貯金は減りました。
参考までに、我が家で取り組んだことを紹介します。
車を2台から1台に減らした
維持管理費で年間30万円の削減。
スマホを格安スマホに切り替えた
スマホ代を夫婦で月2万円→8千円とし、年間15万円の削減。
ソフトバンクからワイモバイルに変えても不便なく使えています。
夫の小遣いを減らした
月3万円→1万円とし、年間24万円の削減。
夫の昼食代を減らした
1日あたり食堂600円→弁当350円とし、年間6万円の削減。
このほか、ふるさと納税を利用する、楽天やヤフーなどポイント制度をフル活用する、家計の見える化をするなど実践しています。
なお、年収が減ると所得税や住民税、保険料も減ります。
・所得税が年間25万円減
・住民税が年間20万円減
・保険料が年間10万円減
となりました。これも大きいですね。
年収が下がることで家計の見直しは必要ですが、これまで支出や税金について無頓着だった場合はそれを勉強する良い機会にもなります。と我が家では前向きに捉えました。
地方公務員の給料事情【デメリットは捉え方次第でメリットに】
ここからは民間企業と比べながら地方公務員の給料事情について触れていきます。
地方公務員の給料は民間企業よりも金額が変動が小さくデメリットに感じる面も多いです。
公務員の給与は税金から支払われている、また、仕事で成果をあげたところで組織としての収入が増えるわけでもない事情を考えると仕方のないところ。
でも考え方次第では、デメリットをメリットと捉えることもできます。
仕事の成果が給料にほぼ影響しない【=手を抜いても差が出ない】
例えば夫の働く市役所では、担当級がボーナス査定で良い評価をもらっても金額は通常よりも0.01月分アップするだけです。
月給が30万円なら、ボーナスが普通の評価の人より3千円アップするだけ。
夫の転職前の民間企業では査定次第で最大30万円アップしていたのでその差は歴然としています。
もちろんこれはほんの一例であって自治体によってはもう少しアップするかもしれません。
でも、地方公務員のボーナスが査定次第で10万円単位で増えることはまずないと思っていいでしょう。
でもそれも考え方次第で、
「仕事で手を抜いても給料は変わらない」
と捉えればメリットともいえます。
もっと頑張ればもっと良い結果が出るはず!と思ってもそれはせずに無難にこなすのです。
一方、民間企業では並の仕事をしていても、まわりの人の成果次第では相対的に自分の評価が下がり、結果ボーナスが下がることだってあります。
公務員は競争社会でない分、成果を気にしなくてもいいので気楽に仕事ができるわけです。
仕事ができても給料が高いわけでない【=給料は能力関係なく年功序列で決まる】
民間企業によっては、仕事ができる人はどんどん給料がアップして入社後数年で同期よりも年収が100万円以上高いということもあります。
でも地方公務員の場合は仕事ができても給料はほとんど増えません。
昇給は年に1回で良い査定を取ったとしても通常よりも1~2号給分上乗せされるだけ。給料表で1号給の差は約2千円なので月給の差は2~5千円、年収の差は良くて5万円程度増えるだけです。
良い査定を毎年取り続けたとしても同期と年収100万円の差がつくには10年、20年とかかります。(そもそも現実的に同じ人が何年も連続で良い査定を取ることはまずないです。)
この人めちゃくちゃ仕事ができる!
というようなスーパー公務員であってもその人より数年早く入庁しただけの平凡な職員の方が年収は高いわけです。
残念ですが、公務員の給与制度上諦めるしかありません。
これも前向きに捉えると
「能力に関係なく年功序列で給料が上がる」
と考えることもできます。
たとえ自分は仕事が遅いと感じていても、とりあえず長く働いていればコツコツと年収が上がっていくわけです。
好景気でも給料は上がらない【=不景気の影響も受けない】
世の中が好景気で民間企業ではボーナスがアップ、という時も公務員は蚊帳の外です。地方公務員の給料は景気の影響はほぼ受けません。
自治体が指標とする民間企業の給料に変化があると、地方公務員の給料にも調整が入りますが大きくは変わりません。
ボーナスならせいぜい1回あたり0.05月分増えるくらいで月給が30万円なら、通常より1万5千円アップにとどまります。
一方、再び夫の前職の民間企業を例に出すと会社の業績が良い時は、個人の査定が同じでも通常より30万円アップしたこともありました。
これも前向きに捉えると
「不景気でも給料に影響を受けない」
ともいえます。
不景気で民間企業の給料が下がると、先ほどと同じように地方公務員の給料にも調整が入りますが、ボーナスなら1回あたり0.05月分減るくらいです。
(月給30万円ならボーナス1万5千円ダウンで済む)
民間企業では業績が大きく下がった時はこんなレベルでは済まないですよね。
(夫の前職では50万円ダウンってときもありました)
景気で大きく上がることもなければ下がることもない、まさしくザ安定です。
余談ですが、この安定はローンの審査でも有利に働くようで、転職後1年未満でも住宅ローンの審査が通り家を購入することができました。
まとめ
30代で地方公務員に転職すると給料はどうなるのか、年収や給料事情について以下にまとめます。
・地方公務員の年収は給与条例の情報から計算できる。
・地方公務員へ転職1年目の年収は500万円以下が目安。
・2年目以降しばらくは1年で約10万円の年収アップ。
・昇格すれば1年で約30万円の年収アップ。
・転職で年収が大きく下がっても家計の見直しで生活水準を下げずにできた・
・地方公務員給料のデメリットはメリットにも捉えることができる。