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公務員の経理事務とは?

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公務員の仕事の一つに経理事務があります。

仕事の内容は大きく分けて下記の三つ。この記事で詳しく説明していきます。

・次年度の予算要求

・予算執行管理

・決算報告

基本は各課の経理担当がとりまとめます。でも部署によっては各個人が対応する部分もあるので、公務員を目指す方に役立つ情報になるかと思います

私の夫は地方公務員で実際に経理事務に携わりました。その経験をもとに紹介していきます。

次年度の予算要求

公務員は決められた予算内で活動しています。

前年度に事業を計画して予算を要求し、財政部門および議会から認められた予算額で計画通りに事業を行います

これらの一連の流れを順に説明していきます。

予算要求の流れ

次年度の予算要求の一連の流れは以下のとおりです。

9〜12月予算要求事業の提示
12〜1月財政部門による査定
3月議員による議決をもって予算確定

要求する予算は以下の二つがあります。
・毎年継続して行う「通常事業」
・新たに打ち出す「新規事業」

それぞれ説明していきます。

通常事業の予算要求

ほとんどの予算は通常事業として要求します。

毎年継続して行う事業のほか、消耗品費や旅費などです。

予算要求の過程を順に説明していきます。

予算検討の依頼

基本的に通常事業の予算は毎年削られていきます。

公務員は最小限の予算で効果的にという大義名分のもと「次年度は今年度より減額して予算要求額を検討せよ」という財政部門から指示を受けます

例えば「今年度100万円を使って行った事業は、次年度は90万円しか予算つけられないので工夫してやってね。」といったイメージです。

減額ができない長期契約や固定費はそのままでOKです。

要求される減額率は自治体や部署、事業内容により変わかと思いますが、夫の職場では1割程度の削減指示を受けるようです。

事業の見直し、予算案の提出

次年度の予算減額を想定したうえで、事業を見直し必要予算を見積もります

課で要求する予算全体で指示された減額を満たせばよいので、予算を削りたくない事業がある場合は、そのぶん他の事業で大幅減額や廃止して調整します。

経理担当にて課全体としての必要予算をとりまめ、必要により再調整して予算案を財政部門へ提出します。

財政部門からのヒアリング、予算案の再検討

提出した予算案について財政部門からヒアリングを受けます

他に見直せる事業はないか、さらに削減しろがないかなどいろいろ聞かれます。

財政部門からのコメントを踏まえ再度検討します。そして最終的な予算案を提出します。

予算の確定

あとは財政部門による査定結果を待つのみ。元々の財政部門からの減額指示やヒアリングでの要望に応えていれば、ほぼ最終案のとおりに予算がつきます

減額査定を受けた場合は、結果は覆せないので査定額を受け入れることになります。

最終的な予算の確定は年度末の議会で承認されたときです。




新規事業の予算要求

前年度の予算ベースで検討する「通常事業」と違って、こちらは新たな事業をやるために予算を取りに行くものです。

新しく事業を行う目的、内容、コスト、ターゲット、規模、費用対効果などを明確にしたうえで、必要な予算を要求をします

ゼロからのスタートなので、予算をつける価値があると判断してもらうために周到な準備が必要です。

予算要求としての大枠の流れは「通常事業」と同じです。

新規事業内容の検討

新規事業の考案も毎年の恒例行事で、財政部門からの通知が来る時期には各部署でアイデア出しを行います。

単にアイデアを考えるだけではダメで、実現性やコストが妥当かも踏まえて事業を考えます。

例えば「スポーツ促進のためスポーツ施設完全無料化」など、必要以上にお金がかかり現実的でないものはダメです。

予算案の提出

実際に事業を実施することを想定して、必要となる具体的な予算を積算します

例えば新規事業の一つに「ラッピングバスによる広報」を盛り込んだ場合は、必要経費を以下のとおり全て積算します。

・デザイン費 ○円
・施工費 ○円
・作業費 ○円
・広告掲出費 ○円

カタログを調べたり業者から参考見積を取って精度高く積算します。

予算案が固まったら課内分を経理担当がとりまとめ、上層部へ順に(部長→副局長)説明・手直しを経て、局長まで承認を得ます。

「局長」とは
地方自治体を構成する局(総務局、会計局など)の中で一番偉い方が局長です。その下に副局長、部長、課長、係長、担当と続きます。

通常は課として出す回答は課長承認としていますが、重要度が高い案件は部長以上の役職までの承認が必要です。

財政部門からのヒアリング

事業や予算額に対する質問や、根拠となる資料の提出などを求められます

場合によってはこの段階で事業内容や要求額を変更することもあります。

予算の確定

財政部門での審査を経て、査定がつきます。

要求通りに予算がつけば満点ですが、ほとんどの事業は減額で査定されるか、要求自体却下されます

減額査定や却下された事業については、予算要求を再チャレンジも可能です。ただ、短期間での見直しが必要で再度却下となることも多いです。

夫の市役所の場合、課で5つほど新規事業で予算要求して、1,2事業に予算がつくかどうかのようです。

予算要求業務は、事業の検討から予算の積算までそれなりの時間と労力を掛けるわけですが、このように落ちる確率が高く不毛にも感じます。

とはいえ次々と新しいことに取り組む姿勢は必要で、地方公務員の業務の中でも重要度は高いです。

「通常事業」と同じく、最終的な予算の確定は年度末の議会で承認されたときです。

予算委員会対応

ここまでに少し触れましたが、要求した予算は議員による議決で最終的に確定します。それは年度末3月の予算委員会で行われます。

特に「新規事業」については予算委員会に向けて公表用の資料作成や、委員会前に議員への説明が必要です

そのうえで、予算委員会にて議員からの質疑応答を経て承認へと進みます。あらゆる質問に回答できるよう想定問答集を入念に準備します。

そして議決をもって予算が確定します。

予算執行管理

続いて、実際についた予算の執行管理について説明していきます。

執行管理の目的は以下の二つです。

・計画通りに予算を執行するため。

・執行残(予算を使わず余ったお金)をつくらないため。

せっかくもらった予算を使わずに余らせたら「何してたの?」って話になりますよね。

現時点の執行状況を把握することで計画通りに予算をつかって事業を進める意識付けになります

予算執行の流れ

では実際に事業を実施するうえでの予算執行の流れについて、啓発用チラシ制作の委託を例に簡単に説明します。

支出負担行為

支出負担行為の意味を調べると「支出の原因となる契約その他の行為」と出てきます。

チラシ制作の場合は、「業者Aと○円でチラシを作ってもらう契約をします。」という行為のことです。

契約に至る前には、契約したい具体的な業務内容を仕様書に落とし込み、その仕様書の業務を対応できる業者を相見積や入札により選定します。

契約後、業者側にて業務を実施します。

検査確認

検査確認とは成果品を見てOK判定する作業のことです。仕様書で依頼したとおりになっているか確認します。

チラシ制作の場合は、デザインに問題ないか、チラシサイズ・部数は合っているかなど。

特に問題なければOKとし、業者へ請求書の準備を依頼します。

支出命令

支出命令の意味は「地方自治体の長が会計管理者へ支出を命令する」ですが、実際に担当が行う作業は委託した業者への契約した費用の支払い手続きです。

成果物の検査確認と請求書をもって手続きをして、所属内および会計部門の承認リレーを経て業者へ支払います。

地方自治体からの支払いは後払いとなります。




執行管理

予算の執行は担当が各々行うことも多いため、課全体での予算の執行状況を経理担当が管理します。課として計画的に無駄なく事業を進めていくために重要な業務です

具体的な執行管理の方法について説明していきます。

管理シートの作成

ここで紹介するのは執行管理方法の一例です。

予算は事業、用途毎に分けて配分されるため、それぞれの予算に対して執行率がわかるようなエクセルシートを作成します。

例えば以下のイメージです。

事業項目予算額執行済額執行残額執行率
事業A委託費200万円150万円50万円75%
消耗品費10万円9万円1万円90%
印刷費5万円0円5万円0%
出張費5万円5万円0円100%
事業B委託費100万円95万円5万円95%

このように予算管理をして数字で示すことで、各事業担当へ執行状況の意識付けになります。

とはいえ計画的に事業を実施していてもどうしても予算で不都合が出てくることがあります。

・相見積や入札の結果、想定よりも大幅に費用が安くなった。

・予算要求時に積算していなかった想定外の必要経費が出てきた。

ということも珍しくありません。

では予算が余る・足りない場合はどうするか、順に説明していきます。

執行残の流用

流用とは「定まっている使途以外のことに用いること」。つまり、ある事業のために付けられた予算を、別の事業に使うことです。

地方公務員の予算執行において、こういった予算の使い方はよくあります。例えば以下の事例です。

・事業a
委託費を50万円積んでいたが相見積りの結果40万円で委託し10万円余った。

・事業b
印刷費を10万円積んで執行済み、増刷をしたいが10万円が必要。

このような場合は、事業aで余った10万円を事業bに流用して使うことを検討します。

流用するにあたって経理部門との協議が必要です。

財政部門から承認が下りれば実際に流用しての事業が可能となります。

こうすることで予算を余らせずに有効活用することができます。課内でやりくりするので他部署へ迷惑をかけることもありません。

補正予算の要求

・予算を取っていなかったが急遽新しく事業を行う必要がでてきた。

・元々予算は取っていたが事業を進めると大幅に予算が足りないことがわかった。かつ他事業からの流用ができそうもない。

このような場合には補正予算の要求という手があります。通常は前年度中に予算を取り付けるものを、当年度になって予算をつけることです。

補正予算を取り付けるには通常予算と同様、議会の承認を受ける必要があります。

それなりにハードルが高いので、実態としては補正予算を要求する機会はあまりないです。上述の他事業の執行残の流用によってうまいこと対応することが多いです。

決算報告

ここまで前年度に予算要求、当年度に予算執行という流れを紹介しました。

そして翌年度には予算の執行結果はどうだったのか決算報告をしなければなりません

例えば令和元年度に予算要求した令和2年度の予算執行結果について、令和3年度に決算報告をします。

決算報告に関連する仕事を説明していきます。

決算見込み報告

予算執行する年度の後半になると、財政部門より決算見込みの報告依頼が来ます。

その時点での予算執行状況および年度内での執行予定を報告します

先ほど示した執行管理表をアレンジした下記のようなものを、経理担当が課内分をとりまとめて報告します。

事業項目予算額執行済額執行見込み額見込み執行率
事業A委託費200万円150万円30万円90%
消耗品費10万円9万円1万円100%
印刷費5万円0円2万円40%
出張費5万円5万円0円100%
事業B委託費100万円95万円0円95%

実際のところ予算執行管理表はこの決算報告を想定して作っています。

なので予算執行管理をしっかりと実施していればそれほど労力はかかりません。

「本当に年度内に予算を使い切れるのか」、「余る・足りない事業がある場合は他の事業予算と調整できないか」など、課内で協議のうえ報告します。

決算委員会対応

決算報告についても予算要求と同様、議会で議論される案件となり、決算委員会が開催されます。

決算委員会では決算報告のほか、事業実績、今後の方針、執行率が悪い事業についてはその理由などを問われます

こちらも予算委員会と同じように想定問答集を入念に準備します。

決算結果はいじれないので、執行率が低い場合はどう言い訳するかが実情です。

執行率が悪い上位数事業はやり玉に挙げられるので、しっかりと予算執行管理をして執行残を作らないことがとても重要です。

決算委員会の時期は8~9月頃。地方公務員の場合、年度内の事業完了は3月でも、出納締めは翌年度5月なので、年度終わり直後にやるわけではないです。

まとめ

公務員の予算決算事務について紹介しました。以下にまとめます。

まとめ

・次年度の予算要求は5~6月頃から動き始め年度末の3月に確定する。

・「通常事業」では予算減額を想定して、事業を見直して予算を要求する。

・「新規事業」では目的、内容などを明確にして必要な予算を要求する。

・予算執行は支出負担行為→検査確認→支出命令という流れ。

・予算執行管理は計画的に無駄なく事業を進める、執行残を作らないためにとても重要。

・予算執行した翌年度には決算結果、事業実績などを報告する。

・予算委員会、決算委員会ともに想定問答集を入念に準備する。

とりまとめは経理担当となりますが、支払い手続きや委員会用の想定問答集など個々の担当が対応する仕事も多いです

また、本記事では歳出(支出)に焦点を当てて説明しましたが、歳入(収入=国からの補助金など)もあって同様に対応します。

公務員を目指す方の参考になればと思います。