地方公務員になるには試験に合格しなければなりません。その一次試験が筆記試験(一般教養問題)です。
新卒枠、社会人枠関係なく、国語、数学、社会はじめ幅広い分野の問題が出ます。
試験に向けてどんな勉強をすればいいのか悩ましいかと思います。この記事では社会人枠で地方公務員を目指す方の参考になるよう、筆記試験の勉強方法を紹介します。
・社会人枠で地方公務員試験を受ける予定の人
・筆記試験の勉強方法を知りたい人
筆記試験の基本情報
試験全体に占める配点は低いが難易度は高い
地方公務員試験は筆記、論文、面接(プレゼンテーション、グループ討論含む)から構成されています。
社会人枠の場合、試験全体から見ると筆記試験の配点は低いことが多いです。でも、難易度は高く油断は禁物です。
配点割合が小さいといってもあくまで試験全体から見た話。筆記試験として合格ボーダーラインがあり、それよりも点数が低ければ二次試験に進めずそこで終了となります。
かつ論文や面接のように自己PR次第の試験とは違い、知識勝負=どれだけ暗記できたか、時間をかけて勉強したかが問われる試験です。
例:令和2年度のある地方自治体の試験の配点割合
社会人枠は一般枠よりも筆記試験の配点割合が低い傾向
出題分野は幅広く問題量も多い
出題分野はかなり幅広い
数的推理、判断推理、資料解釈、現代文、英文、歴史、数学、政治、経済、時事など、幅広い分野から出題されます。
人によっては学生の時に勉強していない分野も多いです。そうでなくても全てを頭に叩き込むにはかなり大変です。
試験は択一式問題
多くの場合は5つの選択肢の中から「正しいもの」もしくは「誤っているもの」を一つ選ぶ形式です。
記述式よりは楽かもしれませんが、当然知識がないと解答できません。
問題量はボリューミー
自治体により様々ですが、1時間半〜2時間半で30〜50問程度と量も多く、しっかりと知識を問われる試験となっています。
筆記試験勉強でやるべきことは三つ
地方公務員試験(社会人枠)に一発合格した夫が筆記試験勉強に掛けた時間は1日3時間を1か月間ほど。
運が良かったのかもしれませんが比較的少ない時間かと思います。どのように試験勉強に取り組んだのか、詳しく紹介していきます。
・過去問集を一冊買う。
・過去問を何度も解く。
・ネットで情報収集する。
ありきたりのことかもしれませんが、勉強方法の一つとして、参考にしていただければ幸いです。詳しく紹介していきます。
過去問集を一冊買う
筆記試験の勉強は独学でも問題ないかと思います。
知識をどれだけ詰め込めるかなので、やる気と努力次第です。でも勉強するための最低限のツールとして過去問集は必要です。
出題分野一式が載っている過去問集を一冊は買うようにしましょう。受けたい自治体に特化したものが売っていたらそれがおすすめです。
どんな試験にも共通しますが、過去問を解くことは効率よく勉強すること、問題の感触を掴むことに役立ちます。
活用例①
例えば以下のような政治の問題(複数自治体掲載の例題より抜粋)。
【問】2019年7月に行われた参議院議員通常選挙について妥当なものを二つを選べ
【問題文中の記述】以下のうち二つが妥当
ア この選挙では定数が削減された。
イ 非拘束名簿式を基本的に維持しつつ特定枠制度が新たに導入された。
ウ 与党である自民党と公明党が改選議席の過半数を獲得した。
エ 改憲勢力の議席数が憲法改正の国会発議に必要な議席数を上回り改正案の審議が始まった。
オ 全参議院議員に占める女性の割合は30%を超えることとなった。
→【解】イ・ウ(試験では5つの選択肢から選びます)
はじめはわからなくても大丈夫です。この問題を通して参議院について勉強すればいいのです。
・定数、与野党の割合、女性の割合
・非拘束名簿式、拘束名簿式、特定枠とは
・改憲など選挙の争点
地方公務員試験では過去問と似たような問題が出ることが多いので、過去問を解くことは的を絞って効率的な勉強につながります。
活用例②
また、数的処理では以下のような問題も出ます(複数自治体掲載の例題より抜粋)。
ある店で、赤ワイン4本と白ワイン5本のセットを1万円で、赤ワイン2本と白ワイン3本のセットを6千円で販売した。
2種類のセットの売上は合計50万円で、売れた赤ワインの本数は合計180本であった。
売れたセットの数は合計いくつか。
この問題を解くと例えば以下のとおり。
①赤ワイン4本と白ワイン5本のセットを1万円
②赤ワイン2本と白ワイン3本のセットを6千円
結果、以下となった。
(a)2種類のセットの売上は合計50万円
(b)売れた赤ワインの本数は合計180本
すると以下のとおり解けます。
①をxセット、②をyセットすると
(a)は「10,000x + 6,000y = 500,000」
(b)は「4x + 2y = 180」
この連立方程式を解くとx=20、y=50となり、答えは「x+y = 70」で70セット。
はじめは解き方がわからない、解けてもかなり時間がかかったにしても、過去問で問題の感触をつかんで慣れることでスムーズに解けるようになります。
以上より、効率よく勉強するため、問題の感触をつかむために過去問集は必須アイテムです。
「基礎を一から勉強して過去問を」という勉強方法もあるかと思いますが、夫は過去問から勉強する方法を選びました。
買った教材は全ての分野が載っている過去問集を一冊だけで、専門書や特定の分野に特化した過去問集は買っていません。
でも結果的には、過去問で的を絞って勉強してもなんとか一発合格ができました。
過去問を何度も解く
過去問集を買ったらとにかく何度も解きましょう。
はじめはわからなければすぐに答えを見て、解説を読んで覚えるやり方が効率が良いかと思います。
正解以外の選択肢がなぜ誤りなのかもしっかりと理解します。
一回解いただけでは覚えられないので、ひと通り終わったらまた何度も繰り返します。
とにかく出題範囲が広く覚えることが多いので、何度も解いて記憶していきましょう。
エビングハウスというドイツの心理学者の実験によると、人の脳は覚えたことを
・1時間後に56%忘れる
・1日後に74%忘れる
・1週間後に77%忘れる
そうです。
実験では相互に関連しない無意味な音節を使用したそうで、勉強して覚える知識の場合には完全には当てはまらないかもしれません。
でも「人の脳は忘れやすい!」ということは間違いないので、繰り返し学習して記憶の定着率を高めていきましょう。
この実験については「エビングハウスの忘却曲線」でウェブで検索すると詳細が出てきますのでご参考まで。
例えば判断推理の問題は、条件を図表に落とし込んだり場合分けを書いて考えても、慣れないうちはかなり時間を要します。
試験本番は時間勝負でもあるので、何度も解いて自分なりに早く解くコツを掴むようにしましょう。
インターネットで情報収集する
過去問で勉強していると解説だけでは情報が足りないこともあります。そんなときはインターネットで情報収集しましょう。
今の時代、専門書を買わなくてもネットで検索すれば基本的な情報は拾えるのでそれで十分かと思います。
筆記試験勉強にどれくらい注力すべきか
筆記試験勉強は時間の許す限り取り組むに越したことはないです。
でも出題範囲も広いので、各分野の基本を抑え、余裕があれば知識を深めるかたちでも良いかと思います。
社会人の場合は仕事が忙しいと勉強できる時間が限られることもあり、時には優先順位をつけることも大切です。
例えば、政令指定都市の場合は、20市のうち13市と半数以上が筆記試験と論文試験が同じ日に行われます。
・筆記試験と論文試験が同じ日
13市(札幌市、仙台市、千葉市、横浜市、川崎市、新潟市、静岡市、名古屋市、京都市、岡山市、広島市、北九州市、福岡市)
・筆記試験と論文試験は違う日
7市(さいたま市、相模原市、浜松市、大阪市、堺市、神戸市、熊本市)
※令和2年度社会人枠行政職の採用試験情報より。社会人枠がない自治体は30代でも受験可能な大卒枠の試験情報より。
※論文試験が二次試験の科目の場合でも、一次試験の筆記試験と同じ日に行う自治体もあり。
自治体にもよりますが論文試験の方が試験全体からみた配分が高い傾向にあるため、筆記試験と同等に勉強に注力する必要があります。
夫が筆記試験にあまり時間が掛けられなかった理由はここにあります。(試験勉強への取り組みが遅かっただけとも言えますが・・・)
まとめ
地方公務員試験の勉強方法(社会人枠 筆記試験)について以下にまとめます。
・試験全体に占める配点は低いが難易度は高い。
・出題範囲が広く試験勉強は大変。
・まずは過去問集を一冊買う。受けたい自治体に特化したものがあればそれがおすすめ。
・過去問を解くことで的を絞って効率的に勉強する。問題の感触をつかむ。
・「過去問を解く」→「解説を読む」→「インターネットで情報を補填」を繰り返す。
・各分野の基本を抑え、余裕があれば知識を深める。
・筆記試験と同じ日に論文試験がある場合は、論文対策にも注力すべき。
筆記試験の結果により受験者が1/3、1/4に絞られることも珍しくありません。まさに第一関門といえるでしょう。
地方公務員を目指す方は、早め早めに試験勉強に取り組みましょう!